衣替え時などに発見されることが多い、スーツのカビ。スーツにカビが付く原因やカビの取り方、予防方法等をクリーニングのプロが教えます!
スーツにカビが発生する原因

スーツは、衣替え時にもクローゼットにかけたまま入れ替えをあまりしないアイテムの一つだと思われます。スーツのようにかけて保管するアイテムは、特にカビが付きやすいので注意が必要です。
そのカビは、いったい何が原因でどのように発生しているのでしょうか?
カビが発生する原因は、3つあります。
- 高温多湿な環境
クローゼットの中に衣類を詰め込んでいる状態では、空気の流れが悪く、湿気がたまりやすい状態です。さらに扉を閉めている状態ではカビが好む20~30℃の気温をキープしています。クローゼットは、カビが発生し繁殖しやすい環境なのです。 - 汚れ・皮脂や汗が付着している衣類がある
汗や皮脂、付着したままの汚れ・汗や皮脂はカビの餌となります。スーツやアウター等自宅でまめに洗濯できないアイテムには皮脂や汗などが残りやすく、着用後すぐにクローゼットに保管してしまうことで、カビが付きやすい状態です。 - カビが好む素材
ウール等、天然の素材は、生地自体がカビの栄養源となり繁殖していきます。スーツは、ウールが素材として含まれることが多くカビが付きやすいアイテムです。
スーツは、着用後クローゼットへしまうことが多く、汗や皮脂が付着したままの状態で保管することで、カビが付着し皮脂や汗を餌に繁殖していきます。
スーツにカビが発生しやすいのは、カビが好む環境と素材、使用方法が原因だったのです。
スーツに生えたカビの取り方を紹介

冬物のスーツを着ようと思ったら、カビが!何てことありますよね。少しの範囲のものであれば自宅でカビを落としてすぐに着用することも可能です。
カビには種類がいくつかありますが、大きく分けて白カビと黒カビ(色付きのカビ)があります。それぞれに特徴があり落とし方が変わります。
それぞれに合った自宅でできるカビの落とし方を見てみましょう。
白カビの落とし方
ふわふわとした白いカビは、比較的落としやすいカビです。
ふわふわと生地表面に付着しているものが多いので、はたき落とすだけで除去できます。ただし、カビに毒性のあるものもありますので室内では行わず、室外でマスクなどを付けて行うようにしてください。はたいたカビを吸い込まないように注意してください。
はたき落とした後は、エタノール等アルコールでカビが付着していた部分にスプレーし乾燥させましょう。エタノールがない場合など、熱湯で殺菌消毒を行う方法もあります。
エタノールは、生地を色落ちさせてしまうことがありますので、使用の際は裏側などで色落ちしないか確認してから使用してください。
黒カビの落とし方
黒カビは、根が深く、はたき落としたり、洗ったりするだけでは落とすことが出来ません。
そのため、酸素系漂白剤を使用し漂白し取り除きます。
ただし、スーツを漂白すると色落ちや型崩れを起こすことがありますので、洗濯表示を確認し漂白できる場合お試しください。
洗濯表示について、下記の内容をご確認ください。

スーツのカビを防ぐ対処法
スーツのカビが発生した後の対処だけではなく、カビ自体を防ぐことが必要です。カビの原因となる3つの要素をなくすことで、カビを防ぐことが出来ます。
クローゼットの除湿

まずは、保管する環境を整えることです。
クローゼットの中は空気がとどまって動かず、湿度が高くなりやすい場所です。
カビは、気温が20~30℃・湿度が80%となると発生しやすくなります。特に梅雨時期などがそういった環境になりやすいのですが、冬場も暖房をつけており結露などによる湿度上昇がみられる場合があります。
どの季節であってもクローゼットは気温が保たれることが多く、さらにたくさんの衣類を詰め込んだ状態にあるとカビが生えやすい環境となります。
クローゼットに湿気をたまりにくくするには、まずは衣類を詰め込みすぎないように収納をするようにしましょう。衣類の間に隙間が出来、空気の通り道を作るようにしてください。
天気の良い湿度の低い日にクローゼットの扉を開けて換気をしてあげるようにしましょう。風が無く空気が動きにくい場合は、サーキュレーターを使用したりして空気を動かしてあげるだけでも湿度を下げることが出来ます。
梅雨や雨が続く場合などは、除湿器やエアコンを併用して湿度を下げるのも効果的です。
衣替え時のカビ対策!洗濯のプロが教える予防方法で、クローゼットの中で保管するときには、どのようにカビ対策を行うか? についてもご紹介しております。
陰干し・浴室乾燥

クローゼット内の湿度をさげてもスーツ自体が湿気ていたりするとカビの原因となることがあります。
そのため、着用したスーツはすぐにクローゼットにしまうのではなく、風通しの良い直射日光の当たらない場所に20分程度陰干しをしてからクローゼットにしまうようにしましょう。
湿度が高い日が続く場合などは、浴室乾燥を使用するのもお勧めです。
スーツだけでなく、アウター類も同様にクローゼットにしまう前に陰干しをしてから仕舞うことをお勧めしています。
スーツのお手入れ

陰干し同様に日頃から、着用したら表面をブラッシングしてしっかりと汚れ・埃を落とすこともお勧めです。
生地表面に付着する埃や髪の毛などはカビの餌になります。ブラッシングで落としておくだけでもカビの予防になります。
出来れば2着以上のスーツをローテションで着用することもお勧めしています。
1着のスーツを着まわしていると生地の劣化が早く汚れが蓄積しやすいため、カビが発生しやすい状態になってします。
礼服など頻繁に来ることがないものは、一度着用したらクリーニングに出してから保管するようにしてください。着用するとどうしても皮脂や汗が付着してします。そのままの状態での保管はカビだけではなく、生地を傷める原因ともなりますので、長期保管する前にはクリーニングを心がけてください。
保管方法
スーツは、型崩れを防ぐためにクローゼットに吊るして保管している方が多いと思われます。
その際に、埃除けのためクリーニング返却時についているビニールをかぶせたまま保管されている方も多いかと思いますが、これがカビの原因となることがあります。
クリーニング時のビニールは、持ち帰りの間の埃や水滴除けにすぎません。
長期保管するのに使用するには、通気性が悪く逆に生地を傷めてしまい、カビを発生させてしまう可能性があります。
クリーニング時のビニールは、帰宅後すぐに外して一度陰干ししましょう。ビニール内に湿気が残っている場合もありますので、乾燥させてあげるとよいです。
保管時の埃除けにカバーを付ける際は、不織布でできたカバーなど、通気性がよいものを選ぶことをお勧めいたします。
カビが生えたら、必ずクリーニングへ
自宅でのカビの落とし方や予防方法をお伝えしてきましたが、実際にカビが生えてしまった場合は、必ずクリーニングに出しましょう。
自宅でのカビの落とし方は、あくまでも応急処置です。表面的にキレイになっているように見えてもカビの根まで除去しきれていない場合が多いです。
カビは、しっかりとカビの根まで除去できていないと同じ場所にカビが再発生してしますことがあります。
クリーニング内容

洗濯のプロであるクリーニング師がそれぞれの素材に合ったカビ処理を行います。
家庭では色落ちや生地を傷めてしまう可能性が高い処理内容でもクリーニング師であれば大丈夫です。
白カビは、ドライクリーニングでも落とすことが可能ですが、黒カビについては部分的にシミ抜きや漂白の作業を行います。
しっかりと繊維の奥に残ったカビの根まで除去します。
カビの根までしっかり除去してもカビ跡が残ってしまう場合があります。そういった場合は、色掛けという特殊処理で色の復元を行うことも可能です。
キレイナのクリーニング事例
キレイナでは、洗濯タグで水洗いが×のアイテムであっても一点一点ウェットクリーニングを行っています。
カビが発生してしまった生地にはウェットクリーニングを行うことで、カビだけでなくカビの原因となる皮脂や汗・汚れもしっかりと落とし、カビの再発生も防ぐことが出来ます。
襟周りにカビ
Before

着用の回数が少なかったため、汚れていないと思いクリーニング等を行わずにクローゼット保管をしており、気が付いたら襟周りにカビが生えてしまいお困りでご依頼いただきました。
襟周りは、直接肌に触れる部分で汗や皮脂が多く付着しやすいためカビが生えやすい部分一つです。
After

まずは『ウェットクリーニング』で全体の汚れを落としていきます。汗や皮脂は、ドライクリーニングでは落とすことが出来ませんので、ジャケットなども年に一度は『ウェットクリーニング』を行うことをお勧めしています。
全体の汚れを落とした後、カビが付着していた部分のカビ処理を行います。部分処理でカビの根までしっかりと除去します。
カビの根までしっかり除去することで、カビの嫌な臭いも取ることが出来て、再びカビが発生してくることを防ぎます。
袖口にカビ
Before

着用後、近くのクリーニング店でドライクリーニングを行ってもらっていましたが、クローゼットに長期保管していて出してみたら片袖にカビが生えてしまいお困りでご依頼をいただきました。
おそらくカビの生えてしまった方の袖がクローゼットの奥側になっていて、空気の流れがとどまって湿気がたまってしまっていたのかもしれません。
口部分は汚れが付きやすい部分なので、ドライクリーニングだけでは汚れが取りきれていなかった可能性もあります。
いろいろな要因が重なって片袖のみカビが生えてしまったのでしょう。
After

この場合も、まずはしっかりと『ウェットクリーニング』で全体をクリーニングしていきます。クリーニングに出されていたということですので、その際の加工剤も一度落としていきます。そうすることで、カビ処理をしやすい状態にします。
『ウェットクリーニング』後は、袖口部分のカビ処理を行い、しっかりとカビを除去していきます。
カビ処理は、家庭で行うことも出来ますが、あくまでも応急処置程度の内容しか行うことが出来ません。正しくカビ処理を行わないと、再びカビが発生する原因ともなりかねません。
もしカビが発生した時には、衣類のプロ・クリーニング師にお任せください。
プロのクリーニング師が伝える、家庭でのクリーニング方法についても是非ご覧ください。
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