今回は、シームレス加工のダウンジャケットについてのお話です。
シームレスダウンとは、ダウンジャケットのキルティング部分を樹脂による圧着加工で縫い目を減らした、新技術で作られたダウンジャケットです。加工の呼び方も様々で、「シームレス加工」や「圧着加工」や「ノーステッチ加工」と言われています。
シームレスダウンのメリットデメリット
シームレスダウンのメリット
・縫製による穴もないため保温性に優れている
・縫い目や継ぎ目が無いので中のダウン(羽毛)やフェザーが縫い目から出にくい
一般的なダウンウェアは、ダウンの入った生地の仕切りを作るのに糸とミシン針を用いて縫製しています。
そのため、針を通した小さな穴がどうしても出来てしまいます。
この穴は着用やクリーニングを繰り返すことで少しずつ広がる場合もあり、中のダウン(羽毛)やフェザーが出てくることや、せっかく保温した暖かさを逃がす原因となります。
更に、微細でも穴があることで雨による水滴を通してしまうこともあります。
ところがシームレスダウンは、樹脂を使い圧着している為そもそも穴があくことがありません。
それにより、保温性・撥水性・防風性・を実現し更に噴き出しなどのトラブルへの課題解決も実現したと言えます。
シームレスダウンのデメリット
・経年劣化で加工が『剥がれやすい』
・加工の寿命は製造されてから3年ほど
圧着加工に用いられる樹脂は「ポリウレタン」が使用されている場合が多く、着用や使用状態などにもよりますが、3年程で圧着部分が劣化して剥離してしまう可能性があります。
ポリウレタンは「合成皮革」「人工皮革」などにも使われています。
そして、水分・熱・紫外線など生活するうえで避けられない環境の中で少しずつ成分が分解され必ず劣化してしまいます。
ポリウレタンが使われている衣類などは全て『製品が作られた時点から劣化が始まっている』ので、非常に注意が必要です。
シームレスダウンのクリーニングについて
・水洗いが原則(ウェットクリーニングか手洗い)
・ドライクリーニングは不可
・洗えるがポリウレタンの耐久性は弱くなる
また、水沢ダウンも以下のクリーニング&ケア方法を記載しています。
クリーニング&アフターケア
CLEANING & AFTER CARE水沢ダウンは、これまでのダウンジャケットにない高い耐水性や保温性、
羽毛抜け防止性などを兼ね備えたダウンジャケットです。
これらの機能を実現するため、特殊な縫製仕様や接着技術などを採用しているため、
洗濯などのお取扱いでは次の点にご注意下さい。01
取扱い洗濯表示
洗濯は、商品に縫い付けられた取扱い表示にしたがって下さい。
ご家庭での手洗いは可能ですが、洗濯槽の大きさや乾燥機の容量によっては、洗浄効果が不足することがあります。このため、クリーニング店でのウエットクリーニング(注)をお勧めします。 (注:ウエットクリーニングはクリーニング店でのマイルドな水洗い)
代表的な水沢ダウンの取扱い表示例を下に示しています。なお、製品品番によっては、特別な仕様がある場合がありますので、必ず事前に取扱い表示をご確認下さい。02
洗濯に関するお願い
洗濯時には、毛や絹、羽毛の取扱いに対応した中性洗剤をご利用下さい。
ひもなどがついている商品は、他のものと絡まないようご注意下さい。
ファスナーやホックなどのついている商品は、開いたままではウェアを傷めることがありますので、洗濯時には閉じて下さい。だたし、裏側の両脇下(パンツは内側の前ウェスト部)に水抜き用ファスナーがあるものは、この水抜き用ファスナーを開けてウェア全体を裏返して洗って下さい。
脱水は、乾燥の効率を高めるためにも、十分に行って下さい。
洗濯の後は、ダウン(羽毛)が乾燥するまでに、かたまらないよう時々ほぐし、十分乾燥させてください。
製品品番によっては、洗濯方法が異なる場合がありますので、必ず事前に取扱い表示をご確認下さい。03
着用や保管に関するお願い
たき火など、火気などとの接触にご注意下さい。
羽毛製品は、羽毛のかさ高性によって保温性を高めています。保管は、長期間製品を押しつぶした状態にならないようご注意下さい。
表地のはっ水は、皮脂などの汚れや摩擦によって低下します。洗濯で汚れを落とし、クリーニング店で、はっ水加工をお願いして下さい。
水沢ダウンは、表地の裏面に透湿防水膜を加工していますが、素材の特性上、徐々に劣化します。また、着用しない状態でも保管環境により数年で劣化することがあります。汗や汚れが付着した状態や高温多湿な環境下での保管は、この耐久性を低下させます。ご使用後は、できるだけ早めに汚れを落とし、風通しの良い場所で保管して下さい。
引用:https://allterrain.descente.com/mizusawa/care/
特に誤解して頂きたくない事として、圧着部分の剥がれは製品の特性によるもので、本質的にはクリーニングが主原因ではないということです。
これは洗濯絵表示を見ても分かりますが、一部メーカーでは稀に「ドライクリーニング可」を意味する表示がされているケースもあるようです。
このような場合は、必ず「ドライクリーニングで圧着部分が剥がれないか?」を確認し、「万が一クリーニング店でドライクリーニングを行い剥がれた場合はメーカーは賠償してくれるのか?」など、慎重に購入を検討してください。
クリーニング後に剥がれに気付いてトラブルになる前に、自ら予防しましょう。
クリーニングをお薦めしない場合も…
クリーニング店によっては、受付時に圧着部分の状態をしっかりと診察しクリーニング処理中の揉み作用などで「剥がれ」が起きる可能性の高い状態であると判断したうえで、お客様に処理をお薦めしない場合も考えられます。
このような対応については、洗って綺麗にすることは出来ても副作用として剥がれる事が想像でき、元の状態から悪化させてしまうからです。
つまり、洗って綺麗にすることより、元の状態で少しでも長く着用してもらうことを優先するからです。
つまりシームレスダウンも同様で、縫い目を無くし樹脂で圧着することで機能性は向上したが、経年劣化する樹脂を用いている為、耐久性が劣ります。
よって、クリーニング店では綺麗に洗うことは出来ますが、耐久性を蘇らせることは出来ない事を理解しておきましょう。
下記、ダウンクリーニングについての記事も参考にしてください。
高級ダウンは絶対にウェットクリーニングすべき4つの理由 キレイナマガジン(kileina.jp)
ダウンに撥水!撥水加工を自宅とクリーニング店で行う際の違い キレイナマガジン(kileina.jp)